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京阪奈の地元民ならではの奈良と京都南部の隠れたスポット・おすすめ情報をご紹介していきます。

伏見稲荷のお塚信仰

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有名な千本鳥居や奥社のさらにその先に、妖しくもカオスな信仰風景がありました。

 

伏見稲荷大社

伏見稲荷は全国3万社のお稲荷さんの総本宮です。昔から「病弘法、欲稲荷」と言われるように、商売繁盛を願う人が訪れる日本屈指の超A級有名神社です。伏見稲荷正面の門の先に本殿があります。訪れた日は多くの参拝者でにぎわっていました。しかしそれはあくまでもこの神社の表の顔です。千本鳥居を抜けた奥社を参拝した辺りから観光客やライトな参拝者は帰ってしまうと思いますが、実はその先に、神社の背後にある山の中に稲荷信仰の真の姿があります。

 

お塚信仰

昼なお暗い山の中を延々と続く鳥居に導かれながら歩いていくと、ところどころに石碑や祠や社が密集している場所があります。これが稲荷信仰のキモの「お塚」です。稲荷 を信仰する全国の団体や個人によって建立されていますが、何といっても目に付くのはさまざまな神号が書き込まれて奉納されたミニ鳥居が大量に積まれていることです。千本鳥居以外にこんなにも鳥居があるとはお釈迦様でも気づかないのではないのでしょうか。暗く沈んだ緑の中に立てかけられている大量の朱の鳥居はどこか血の色を惹起させます。あるいは日本人の深層心理にある信仰心の奥底にあるものが表れているのでしょうか。心をざわつかせます。

伏見稲荷大社

大量のミニ鳥居

八百万のオリジナル神様

このお塚信仰、発祥のきっかけは神仏分離令であったといいます。神道と仏教を分離す る動きはそれまでグレーゾーンだったさまざまな信仰をどちらかにカテゴライズする運動でもありました。そんな中、流行体や個人が信仰していた神様などを稲荷大明神として祀ることになったのです。つまりお塚信仰とは、稲荷信仰という名のもとに展開された民間信仰、個人信仰なのです。お塚にある石碑を見てみると聞いたことがない神様ばかりですが、それもそのはずです。お稲荷さんとはあまり関係のない個人が創り出したオリジナルの神様なのだからです。

 

石碑のそれぞれには全部違う神様が祀られており、八百万の神がいるということを実感します。「玉大神」と書かれたイワクラのようにでかい石碑もあります。見た目は同じようなお塚ですが、みな違う神様の集合体です。そして、個人的に創造された神様なので聞いたことのない神様の名前ばかりです。横では講の人達が唱える祝詞が深い山の中に響いていました。

 

周辺にも広がるカオス

伏見稲荷の周辺にはお塚とは別に神道や仏教のみならず諸々の宗教が混合された不思議な霊場や道場などもたくさんあり、信仰の多様さを実感せざるを得ません。神社の近くには新興宗教や霊能者の道場なども多く見られます。一般に我々がイメージする神社とはまったく違う、もっと毒々しく、混沌とした、そして妖しくもアバウトでフリーな信仰風景がここにはあります。神が人を産むのではなく、人が神を産んで祀っているのです。国家神道誕生以前の信仰の姿をうかがい知ることができる貴重な場所といえるのではないでしょうか。

 

アクセス

【電車】JR奈良線稲荷駅」から伏見稲荷大社まで徒歩2分

【住所】京都府京都市伏見区深草藪之内町68(伏見稲荷大社)